共感と傾聴のリスク~ラポールを形成できない相手がいる

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心理学をもとにしたスキルで、ビジネスや教育やあらゆる場面でクライアント等との関係を良好に保つための信頼構築の基礎スキルとされるものがあります。

共感、受容、傾聴ですね。

これらのスキルは実際、ラポール(相互の信頼関係)構築のためのスキルとして接客技術の基礎教育としても取り上げられるものです。

相手を否定しないこのスキルはとても有効で、良好な人間関係の基礎になります。

ところが、これをプライベート全般で行うことには非常に大きなリスクをはらんでいます。

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ラポールとは相互関係があって成立するもの

相手との相互の信頼関係を形成していくことを、ラポール形成といいます。

ラポールを形成することにより相手と円滑な人間関係を築くことは、通常なら可能です。

ところが、ここには一点注意すべきことがあり、それは相手が精神的に健康な場合は、という但し書きがつきます。

人を信頼する、というのは健康的な精神状態にあって初めてできることです。人には病も障害もありますので、必ずしもみんなが健康な状態にあるわけではありません。また、健康だった人であっても、何かきっかけがあれば不健康になることもあるでしょう。

不健康な状態にある人というのは人を信じるということが難しい状態にありますので、そもそも相互関係を前提としたラポールを形成することも難しくなります。それは一方の努力だけでどうにかなる問題ではありません。

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信頼関係の基礎をつくる養育環境

相互信頼関係の基礎は、主に養育者と子どもの時から始まります。

養育者の養育態度として、まさに共感・受容・傾聴が健全な精神の発達に非常に重要な役割を果たします。

乳幼児はまだ自分というものを認識していません。そこから、養育者による共感的態度と、言葉がけによって自分の感情を認識し、自分の感情に名前がついていることなども知っていきます。

そうやって「自分を知ること」からスタートして、ようやく自分ではない存在に気がついていきます。自分の感情が相手の感情とは違うということなどを知っていくのですね。

ところが、この段階で不適切な養育態度を継続すると、「自分が感じていること」に鈍感になっていきます。したがって、自分と他人という区別すら曖昧になります。

・泣いている→痛くないでしょ!!

・怒っている→暴力で捻じ伏せる

このような極端な態度は、健全な精神的発達を阻害します。

また同時に、子どもに共感的態度をとるだけで「親や身の回りの人間自身が感じていることを無かったことにするような甘やかし」をすることも、自分と他人が違う存在であるという気づきを得られなくします。

本人や周りの人間が「個人が感じていることを無かったことにする」環境において、人は一人の人間として尊重されません。それは自らの意思(または無意識)で自分を尊重していない場合もありますが、良好な人間関係を築いていくにあたって適切な境界線を引けないということに繋がります。

不適切な人間関係を基礎にしてしまうとその環境にある意味適応してしまいますので、相手のことも尊重できません。そう学んでいないので当然といえば当然ですね。

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ラポールを形成できない相手にこの態度をとるとどうなるのか

共感、受容、傾聴によって形成できるとされている相互の信頼関係は、相手を一人の人間として捉えることができる前提となっています。

相互の信頼関係を形成した先にあるのは、お互いを思いやること、お互いを尊重することです。ですが、もし片方の人が相手を一人の人間として認識すること自体に課題を抱えている場合、それは難しくなります。

そういった相手に対して共感、受容、傾聴などの態度で接した時に何が起こるのか?というと、相手は「自分のことをわかってくれる」とは思うでしょうが、こちらのことをわかりたいとは思えないわけですから、一方的な依存関係になります。

一方的にこちらが共感、受容、傾聴の態度を取り続けるだけで、こちらのことを思いやってくれることは無い、こちらの言葉を傾聴してくれることも共感を示してくれることも無い、ということです。

こういった関係は非常に不健全であり、人を消耗させます。

共感、受容、傾聴、こういった良好な人間関係を形成するためのスキルは、一種のケア労働・感情労働です。扱い方を間違えれば一方的な搾取関係にも繋がります。

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人間関係に疲れたときは

思いやりは大切です。

ですが、その思いやりは相手にだけではなく自分にも持ってあげてください。自己犠牲で他者尊重をしてはいけません。自分も尊重し、相手も尊重するからこそ相互の信頼関係を築くことができます。

頑張っても報われない関係に悩んだ時、自分を大切にできているかどうか、今一度振り返ってみてくださいね。

人間関係の問題にぶち当たった時、だいたいどこにも書いてある「自分を大切にしましょう」という言葉。今となっては私も書いてますが、「そもそも...

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コメント

  1. ぴょにこ より:

    はじめまして。
    私は今、俗にモラハラと言われる精神的虐待をしてきた夫と離婚調停中の、ぴょにこと申します(ペンネームで失礼します)
    現在面会交流審判も同時に行っていますが「共感と傾聴のリスク~ラポールを形成できない相手がいる」の記事をみて、子供にとっても夫との関わりは危険性を孕んだものではないかと考えました。
    ただ、裁判所に意見を提出するにあたり、こちらのブログを参考とするわけには参りませんので、もしお手数でなければ、記事を書くにあたり元とした心理学の教科書や論文など教えていただけませんでしょうか?
    申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

    • kinimini より:

      こんにちは。
      参考にした本で覚えている範囲のものは参考文献の記事にまとめてありますが、昔読み漁っていた時期と今とでは随分と時間が経過しているので、どの本がどれに繋がっているとも言い難い文章を書いていると思います。
      モラハラに関する本といえば、被害者の多くはマリー=フランス・イルゴイエンヌの書いた「モラル・ハラスメント」を読んでいるのではないかとは思います。
      あとはご自身の体験されたことから相手の行動パターンは見えていらっしゃるかと思いますし、自己愛性人格障害・自己愛性パーソナリティ障害の診断基準などをまとめたサイトなどと絡めたら参考資料になるのではないかと思います。
      応援しています。

  2. ぴょにこ より:

    先ほどコメントを記載致しましたがどうか削除いただけませんでしょうか?
    誤って名前を実名入力にしてしまいました。
    どうかよろしくお願い申し上げます。

  3. 西山輝代美 より:

    娘と信頼関係を築くのはもう無理だと最近確信しました。娘は結婚して来年小学校入学する男の子がいます。娘は今年の6月に交通事故に遭いました。そして、10月に義父を亡くし葬儀に参列しました。つい最近、家族連れで我が家に帰省して自分の旦那がいない所で私を攻撃しました。「お母さん、発達障害気味じゃないの?こんなに洋服を積み上げて。私は片付け費用は出したくないから、お母さんが死ぬまでに洋服は片付けておいてね。お母さんには長生きしてもらいたいし今すぐでなくてもいいから。」「お母さんは私が交通事故を起こした時、加害者に味方した態度を取ったよね?娘の私はどうなってもよかったの?だからあの時LINE連絡したでしょう?お母さんは来なくていいって。今もお母さんを許していないわ。」と。娘の言っいる事は正論です。だからといって、私を毒親扱いをして、死ぬまでに散らかっている部屋を片付けろとは。私は驚いてしまい言葉が出ませんでした。娘にはきちんと向き合ってきたつもりでも、私は娘にとって毒母だったんだとショックを受けました。幸い、娘の旦那は転勤族。他県に移動になれば我が家には来ないでしょう。娘にはもう関わらない方がいいと心の中で思いました。ナルさんに聞いてもらいたくて愚痴になってしまいました。申し訳ありません。