虐待の連鎖はなぜ起こる?自己愛性パーソナリティ障害の連鎖

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虐待は連鎖すると言われますが、実際に連鎖する割合はさほど高くはなく、研究によって多少異なるもののおよそ3~5割と言われています。半分以上は連鎖しないのですね。

でも、「連鎖する」と言われている事実は実際にあります。ところが、虐待された人間が必ずしも「虐待をする側」になる、ということではないのです。

虐待の連鎖とは「支配と被支配の関係性」を学ぶことによって引き起こされる

人間は、学びによって人間になります。狼に育てられたとされる人間が狼としての振る舞いを覚えて生きていたのと同様に、いわば白紙の状態から人間になっていくわけですね。

人間が人間になる過程において、家庭での人間関係というのはその人の人間関係の基礎となります。したがって、虐待のある家庭で生まれ育つということは「虐待」という関係性を学び、それを基礎として人間関係を構築するようになる、ということを意味します。

虐待とはすなわち、支配と被支配という関係性です。

支配者が被支配者の意思を無視し、権力の勾配を利用しながら被支配者を支配者の思い通りにすることです。そこに基本的人権はありません。

支配者が殴りたいと思えば殴ります。被支配者が望むものは与えません。被支配者の感じたことや意思は無いものとして扱われます。

このような関係性の中で、「権力を身に着けたら人を支配してもいい」という学びを得た人間は、支配対象だと認識した相手を虐待する人間になります。一方で、「自分は支配される人間である」という学びを得た人間は粗末に扱われることを受け入れる人間になります。また、このような関係性から人生での躓きを経験して、生きづらさから学び直しをする人間もいます。

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虐待・DV・モラルハラスメントと自己愛性パーソナリティ障害

虐待を行う人間の中でも、虐待の自覚を持つことが難しく、いわば「虐待をせずにはいられない」状態にある障害があります。

自己愛性パーソナリティ障害の中でも、他害の酷いタイプが該当します。
自己愛性パーソナリティ障害は、上記のような家庭環境の中で支配者として生きることで適応しようとした人格です。

虐待のある家庭では支配と被支配によって関係が構築されていますので、そこに心理的な境界線は存在しません。

自己愛性パーソナリティ障害は前述のような支配・非支配の関係性を基礎として学んでいるので、心理的境界を持ちません。そして、受け入れがたい現実は防衛機制によって認識しないというかたちで自分を守る適応の仕方をしています。

自他境界が無く支配者として生きる&ネガティブな現実は認知を歪めて拒否する、という心理構造から、自己愛性パーソナリティ障害はハラスメントをせずにはいられない行動パターンを身に着けています。

自己愛性パーソナリティ障害が育つ背景については他の記事で詳しく書いておりますので是非参考にしてください。記事の下部にご紹介しておきます。

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連鎖は社会全体に及ぶ

虐待は、なにも家庭の中にとどまりません。虐待は関係性の学習による連鎖ですので、支配・被支配の関係性を人間関係の基礎だと学んだ人間は、それを家庭の外でも適用します。

かつては〇〇ハラスメントと言われるようなこと自体がなく、数々のハラスメント、要は権力の勾配を利用した嫌がらせを伴う支配的行動を当たり前のこととする社会的な空気がありました。世代間によるギャップはあっても、現在でもまだまだ残っているのが現状です。

自己愛性パーソナリティ障害に顕著にみられるこういった「支配者として振る舞うこと」については、優生思想の定着している社会、そして人権意識に欠けた社会では容易に受け入れられてしまいます。

今、ハラスメント、虐待行為が問題視されるようになってきた、ということは、社会に人権意識が育まれてきたことのあらわれでもあります。

自己愛性パーソナリティ障害という人格の障害が、障害である、と認識されるようになってきたことも、「その行為を異常な行いであると判断するようになった世の中」が背景にあります。

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虐待が関係性の学習によって連鎖するのであれば、「関係性のあり方」について世の中全体で人権意識に根ざした他社尊重のある関係性・コミュニケーションの方法を共有できるようになることで、その連鎖をだいぶ食い止めることができるでしょう。

いじめ問題が発生した時、本当にケアしなければならないのは加害者であると言われます。実際、加害せずにいられない状態は健康ではありません。元被害者である加害者、そして被害者である皆に必要なケアが施されるようになることを望みます。また、そのためにも構造的な理解が社会で共有されていくことを願い記事にまとめました。

下のリンクは記事の中でご紹介した関連記事です。他にも自己愛性パーソナリティ障害や人間関係の悩みについての記事を多数書いておりますので、是非参考にしていただければと思います。

自己愛性パーソナリティ障害が生まれ育つ背景には自己愛性パーソナリティ障害の親がいることが殆どです。そして、自己愛性パーソナリティ障害の被害に頻繁に遭ってしまう「被害者体質」、心理学的には共依存傾向のある人が生まれ育つ環境にも、多くの場合家族に自己愛性パーソナリティ障害がいます。

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