たまに驚くようなスピードで距離を詰めてくる人や、「え?私達そんな話をする間柄じゃないんですけど…」という人っていますよね。今回は所謂「距離なしさん」についての考察記事になります。
距離なしさんにも種類がある
距離なしさんにも種類があります。それは大きく分けて人格障害的なものと、発達障害的なものと、それ以外の生育環境が距離なしだったケースとがあります。
・パーソナリティ障害(人格障害)的なパターン
これが一番人を悩ませることが多い距離なしさんです。
とにかくグイグイきます。というか、そもそも自分と他人が違う人間であるという感覚がないので人の部屋を自分の部屋のように認識して勝手に入ってくるような感じでしょうか。相手がどう感じるのか?ということを認識することができません。ターゲットにロックオンして執着します。
その執着心の由来が病んでいるため人を振り回します。
・発達障害的なパターン
発達障害の人は五感が定型発達の人と違います。また嘘が得意ではありません。
したがってお世辞といういわば「嘘」を本当のことだと認識してしまう傾向にあります。社交辞令で親しみを込めてお誘いした場合などは普通に乗っかってきます。これが周囲からは空気の読めない距離なしだと思われる所以です。
ただ、発達障害の人も知能は普通なので、「本当の意味が別にある」ということを知る年齢になると「何を信じていいのかわからない」からこそ信じないという対策をとるようになることも多く、グイグイ系の距離なしになることは少ないです。
失敗経験が少ないうちは言葉の裏の意味などもわからず距離感もわからないので、自分の情報も他人の情報も全部オープンにするスタイルで接してきます。それで自分が損をするとか得をするという感覚も定型発達の人のようにあまりありません。感覚の違いを言語化して説明してあげるとわかりあえたりします。
一点特筆事項として、発達障害の二次障害としてパーソナリティ障害になるケースが少なくありません。その場合は非常に大変です。
・生育環境が距離なしだったパターン
このケースは田舎などだと少なくありません。
玄関からご近所さんが入ってきて居間で家主を待っているのが当たり前&近所の人との距離感が家族の人の距離感と変わらない環境で育ったために基本的に人との距離感はそんなもんだと認識しているパターンです。
これは違う文化で育った人なので、文化の違いが理解できると解決します。
または逆に、幼少期から転勤族として育ち「人と親密になる」という経験が不足しているために人との心理的な距離感に遠近があるということが認識できないまま年齢を重ねてしまったパターンもあります。
距離なしさんへの対策
上記のうちの下2つに関しては、異文化コミュニケーションのような心持ちで互いにどう感じているのか?をすり合わせていくことで距離感を調節していくことが可能です。
ただ、パーソナリティ障害の場合はそうはいきません。これは人格が発達していく過程で自他境界が分離していないという大きな課題を抱えたまま大人になってしまったケースなので、「話せば分かる」ということはありません。そもそも自分と他人が違う人間であるという感覚を持つことがうまくできていません。それが距離なしの理由です。
そしてこの自他境界が分離していないということ、また、人格形成の過程で自我の獲得が不十分である、ということにより、自分の感情処理に他人を利用するという特性を持ち、様々なトラブルを巻き起こしていきます。
パーソナリティ障害というとまだあまり一般的ではありませんが、モラハラの加害者としては自己愛性パーソナリティ障害が有名です。
パーソナリティ障害にも色々な種類がありますが、対人関係でトラブルを多く起こすのはクラスターB群になります。自己愛性パーソナリティ障害もその中に含まれ、他には境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害などがあります。中でも自己愛性と境界性の対人関係でのトラブルの多さはダントツです。
その理由はその障害ゆえの承認欲求の異常な強さと防衛機制です。
よく問題視されるタイプの距離なしさんは基本的に特定の人物(ターゲット)に干渉していきますが、これは自分という存在の不確かさを他人を使って補う行為のひとつとなります。
人格形成が不全であるため基本的に距離なしさんはひとりではいられない不安定さを抱えています。そこで、誰かと関わることによって(誰かを自分の松葉杖のように使うことによって)安定しようとするのです。
求められてもいないのに相手の人生に口をだすことも、相手の情報を集めて歪めて使用するのも、相手を使うことで「(相対的に)自分は価値のある存在だ」とエゴを養っています。
また、他人の家に上げられたらこれ幸いにと通されてもいない部屋にまで勝手に上がり込みますが、こういった行為も相手をジャッジして自分の優位性をあげるための情報収集の一環であったりします。
パーソナリティ障害の人がターゲットに接近する時にやたら褒めまくったり贈り物をしたりすることがよくありますが、これらも執着対象との距離を詰めるため、メリットを得るための撒き餌のようなものです。好意の返報性の利用ですね。
パーソナリティ障害の人の対人関係は基本的に「勝ち負け」・「支配・被支配」・「利用価値」です。したがって対等な関係を築くことはできません。
妙に好かれてしまうと最初はとてもよくしてくれますが、そんな時はだいたいこちらを理想化しています。そして、何か違うと思ったらこき下ろして脱価値化して終わります。そこに自分とは違う一人の人間が存在するという感覚を持つことができないからです。
このブログには他にも自己愛性パーソナリティ障害に関する記事をたくさん書いていますが、「こういう人がいるのだ」という知識をもとに心にしっかりとした境界線を引きながら上手に距離を置けるのが理想です。
「この人なら私をかまってくれる」と思われると執着されてしまいます。ターゲットにされる人は基本的に優しすぎます。自己犠牲と優しさを混同することなく、「自分の心地よい対人スタイルはこの程度である」ということを最初の段階で明言して関わりの深さを調整してください。(例:連絡不精だから面倒に感じる。一年に一回会うくらいが丁度いいのだ。など)
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