自己愛性パーソナリティ障害傾向の行動をとる子供の親は自己愛性パーソナリティ障害であることが多いといいます。
一番最初にモデリングする人間関係や価値観は自己愛性パーソナリティ障害のものになりますから、それ以外の関係性や価値観に強く影響を受けるような機会がなければ、その危険性は高くなるでしょう、
今回は私が体験してしまった「親子で自己愛系」な人達独特のエピソードのご紹介です。
子供は親の権威付けのための道具にする親
私の同級生に自己愛性パーソナリティ障害の行動パターンをとる親子がいました。新築が立ち並ぶ新しい区画にたまたま同じ時期に引っ越してきた、という境遇でした。
超近所に同時期に引っ越してきた同性の同級生、ということもあったのでしょう。この母親に目をつけられてしまい、私の母が主なターゲットとして被害に遭うことになりました。
この自己愛ママさんは「自慢の娘」を育て上げるために必死でした。バレエにピアノに英語に通信教育にと教育に熱心で、それをとても誇りにしているようでした。
目障りな人間の印象操作をする
「嫉妬されて困っちゃう」
いつもピアノ伴奏をやっていた自己愛娘さんでしたが、ある時母親はそんなことを口にして、なぜか私にその仕事が回ってきます。先生を巻き込んで「嫉妬から嫌がらせを受けていて困っている。量も大変なのでやりたがっている人に譲ってあげて」というのが事の発端のようでした。
私は伴奏をやりたいなどと言っていませんし、そもそも思ったことすらありませんでした。そして転校してきてまだ一年に満たない時期でしたし、なんならその時点では学校で弾いたこともありません。周りの子は私がピアノを弾けるなどと知らないのです。
にもかかわらず、なぜか音楽教諭に呼ばれて指名されることになりました。自己愛ママのストーリーでは私を加害者にしたかったようです。（その後この音楽教諭にはどうも見当違いな注意を受けたり、不当に低い成績をつけられることが続きました。）
他にも何かと絡んでくる自己愛ママさん。最悪なことに日常生活が見えるくらい近所のため逃げ場がありません。
当時はまだ自己愛性パーソナリティ障害（人格障害）などという情報はありません。ただただわけがわからないまま、特有のねっとりと絡みつく対抗意識の中で執拗にほのめかされる自分上げと他人下げです。
「あの人絶対おかしい」と母は言っていましたが、近所で顔を合わせる度に私や父親の情報を聞き出し、「うちもいいところまでいったんだけど～」などと微妙な謙遜をしながらも、対抗意識をむき出しにして「あんたにウチは負けてない」「おまえなんて大したことない」という仄めかしを繰り返します。
せっかく買った新築。しかし玄関を開けるとおかしな人がいて、気分良く家の外に出ることもできず、家の中にいても監視されているかのように視線が気になります。…新しい環境の中、家が落ち着く場所ではなくなってしまい母はどんどん不安定になり、私の家庭環境は劣悪になっていきました。
娘も母親と同様に比較で自分の価値を確認しようとする
娘の方もやはり自己愛ママの影響をたっぷり受けて育っているためまもとではありません。
私に探りを入れてはマウンティングを繰り返します。
複数人で交換日記をやっていれば、自己愛娘が後から入ってきて、私を飛ばすようになります。自己愛さんあるあるの仲間はずれですね。
また、私が両思いと噂になった男子がいれば、身体をべったりと密着させて会話をし、周囲の人がギョッとしながら「あれ、おかしいよ？いいの？」と言われるような行動をとりました。思春期の男子と女子にしてはどう見ても異様な光景でした。
ターゲットのネガキャンといい、親子揃ってばっちりテンプレ通りの自己愛行動でした。
大人になってから再会した娘はやはり人と比較する
実家から離れて１０年以上経ち、出産のための里帰りで久しぶりに実家に帰っていた頃です。道端で偶然自己愛娘さんと会いました。近所ですからね。
彼女は前後の会話も何もなく、私の姿をみて突然一言、「子共いるんだね…。私は全然何もない。」と言いました。
…………！？
衝撃でした。お互いもう３０を過ぎたいい大人でしたし、それぞれの人生を歩んでいました。初っ端でそのセリフが出てくることにも驚きましたが、自分の人生に対する誇りの無さに唖然としました。
彼女は結婚はしていませんが、その分キャリアに邁進しているはずでした。自己愛が不健康な人間に育てられるとやはり自分の人生を生きられないのだと感じた出来事でした。
彼女はまだ「私は全然何もない」という、いわば虚無感を自覚できている様子だったので、防衛機制で全て忘れてしまうようなほど深刻な自己愛性パーソナリティ障害ではないのかもしれません。ですが自己愛傾向バリバリだった親がその子供の人生に落とす大きな影は相当なものであるというのを感じずにはいられませんでした。
彼女の言動には子供の頃から随分と不快な思いをしましたが、大人になって会ったこの時の彼女を見て以来、その病理の罪深さから「嫌い」という感情が「哀れみ」へと変化しました。
自己愛性パーソナリティ障害とは空虚な人生をおくっているのですね。その空虚な人生に他人を引きずり込もうとするのはいただけませんが（それ自体が「そうせずにはいられない」障害ですが）、その人の生まれ育った環境の中で、本人がなりたくてなったわけではないのだという事実がそこに横たわっているということは、被害に遭った自分の憤りを少しはやわらげてくれるのではないでしょうか。
